絶対零度の鍵
時間が入り混じり、灼熱の国の境も極寒の国の境もなくなってしまった。


白き獣は封じられていた檻から解かれてしまい、温度師の犬のようになっている。




「何故、さっきから何も言わんのだ…」




燕軌が怒りを燃え上がらせた。



側近であった鳳は、突風吹き荒ぶ中、果敢にも蓮貴の間合いに入ろうと挑んだ。



しかし、蓮貴は指ひとつ動かさず、鳳は動かぬ者となった。



しかも、鳳は蓮貴に触れることは愚か、近寄ることすらできずに。




「お前は、世界を滅ぼして何をするというのだ!!」




燕軌の片腕から、鷲のような炎が燃え上がり、蓮貴に襲い掛かる。




翼を広げたそれは蓮貴の結界に噛み付き、鋭い爪を立てようとするが、蓮貴はそれをちらっと一瞥すると、人差し指を上から下にすっと振り下ろした。




するとたちまち氷の剣が鷲を突き刺し、あっという間に消しさった。





「…燕軌どの。感情で動かれるな。奴は強い。我々が力を合わせなければ、力を無駄に消耗することになりますぞ。」




鳳凛が、肩を落とした燕軌に耳打ちする。



全員が、蓮貴の力に圧倒されていた。




「いつまでだんまり決め込んでんのよー!!!クミを返しなさいよ!」




勝ち気な少女以外は。
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