絶対零度の鍵







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「お姉さーん!!こっちこっちー…もう少し速く歩かないと、陽が沈んじゃいますよ」




自分も充分若いと思っていたけれど、やっぱり年はとったのね…



数メートル先で立ち止まってこっちを見ている少女に対して、尭は軽いジェラシーを感じていた。


少女の名前は翠と言った。記憶がなく、自分の家さえないようだという尭に、翠は暫く自分の所へ居るといいと、提案してくれた。この流れは狙い通りだった。勿論、翠の両親が承諾してくれなければならないが。


そして、翠の自宅へ向かうことになったのだが、さっきの場所から正反対の所らしくて、意外と距離があった。


それなのに、だ。



歩いているだけですっかり息が上がっている尭と違って、先導してくれる翠は飛んだりはねたりよく動くのに、全く息切れしていなかった。




「すっ、こし…休、憩させて…」



尭はやっとのことで、そう言うと額の汗を手で拭う。



緑の多い、土地だった。


極寒の国とは大違いだ。

少ししかいなかったからよくは知らないが、外の景色は雪国そのものだったから。


今歩いている道も、畦道といえるような田舎道で、おばあちゃんの家を思い出す。



のどかで、暖かい。
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