絶対零度の鍵
「でも、今、喧嘩中なんです。」
くるりと向きを変えて歩き出しつつ、翠が呟く。
「え?」
豪邸に奪われていた意識を慌てて取り戻しながら、少し急ぎ足で翠の隣に追いついた。
「その子、才能があるんですよ。時期、温度師ですから。」
「温度師?次の?」
尭の頭がまた混乱してくる。
あれ、温度師って今いるんだっけ。
王の任命とかなんとかって言ってた気がする。
自分は一体なんの世界にいるのだろう。
「私は、女だから…温度師のことって正直よくわからないんです。それで…色々訊ねたら怒らせちゃって。」
難しい顔をしている尭に気付かず、翠は喧嘩の原因を話し始める。
「それから、避けられているみたいなんですよねぇ…」