絶対零度の鍵
そんな風にしながら歩いていると不思議なもので、昨日感じたよりも早くに目的地に辿り着く。


少し手前で、翠が「ほら」と言って走り出したので、尭もそれに倣った。



「わぁ…すご…」



まだ薄暗い中で月の光だけを浴びて、白い、いや銀色にさえ見える花がびっしりと池の周りを囲んでいた。



きら、きら、と。


輝きを含んだ花畑。


その美しさに、思わず足取りもゆっくりになり、恐る恐る花の傍へと近寄る。




「…触っても、、平気かな…」



もしかして、たちどころにしぼんでしまうのではないかと懸念して、尭が翠に訊ねるが。



プチっという音と共に、翠が頷いてこちらを見たので、尭も頷いて花に触れた。



花の光の反射で、二人とも顔が青白く照らされる。



一輪一輪の光の強さは、ちょうど蛍くらいか。


けれど、これだけの量が密集して咲いているので、かなり明るい。



「冷たい…」



花弁の感触は頼りないが、触るとひんやりとした。
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