絶対零度の鍵
「ね、きれいでしょ?」



同意を求めるように翠が隣に寄ってきて、二人でその場に座り込む。



「うん、とってもキレイだね。」



尭はそう言いながら、目の前に広がる花が、果たして自分の記憶の中にある、公園の小山にあった花だったかどうか思い出そうとしていた。



尭が見つけた時間帯は昼頃だったからか、こんなに輝きを放ってはいなかったような気がする。



それに、この花は薄暗くて寒い月明かりの下でしか咲かないんだとすれば。



―やっぱり、違うかしらね。



そんな風に思いながら、尭は翠の真似をして命の短い花を手折った。



すると、急に卓毅のことが強く思い出され、尭は切なくなる。




「翠はさ、その―さっき言ってた子のこと、好きなの?」




気付けば、言葉が口を衝いて出ていた。

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