絶対零度の鍵
天真爛漫に振舞う右京に、尭はちょっとだけ、嫉妬した。


自分にはあんな風に周囲に接することはできない。


でも。


少し位、自分の気持ちに気付いてくれたっていいのに。




だけど。



都合よく生きていたのは、自分も同じなのかもしれない。




現に今、言えばよかったと思った。



もしも、この村に卓毅が居なかったらどうしよう。


元の世界に戻れなかったらどうしよう。



このままさよならだったらどうしよう。




人は、いつでも傍に居てくれるなんて限らない。




そんなことは、わかっているつもりだったのに。



当たり前のように、毎日が来ると思っていた自分が居た。



毎日は、いつもあるものだと思い込んでいた。



当たり前のことなんて、何一つなかったのに。
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