絶対零度の鍵
ふと、何かの声が聴こえたような気がして、後ろを振り返った。



「あ。」



大きな、城の様な建物が聳え立っている。


恐らく、淳の居る所は裏側のようで、門はない。


しかも、さっき見た砂漠の景色とは違い、熱帯のではあるけれど、緑が多く植わっている。


人の気配がある、というのと、水分を感じさせる物がある、というのはなんとも安心感がある。




淳は内心ほっとする。



砂漠のど真ん中で一人っきりだとしたら、スマホもポケットにない今、天幕暮らしをする民族を探しにいかなければならないところだった。


その上、この陽の光から逃れる術がない。



半袖のシャツに、ハーフのチノパン、くるぶしソックスにスニーカー。



どう考えても、砂漠仕様ではない。

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