絶対零度の鍵
塗り替えられた過去
―そろそろ、陽が沈むな。
僕は開けておいた障子の間から見える景色に、ぼんやりとそう思った。
やがておもむろに腰を上げると、廊下に出、柱に寄りかかって空を見上げた。
すっきりと晴れた一日だった。
今見ても、雲はほとんどない。
穏やかな橙色が、濃くなっていく。
ふと、腹の虫が鳴いた。
「そういわれてみれば、お腹が空いたな。」
蓮貴は朝早くから出かけてしまって、話し相手が居なかった僕はつまらなくて死にそうだった。
空腹も気付かないほどに心を無にしていたらしい。
―玄に何か分けてもらおう。
そんなことを思い立って、僕は長い廊下を厨房の方へと向かい、歩き出す。
廊下に光があたっていたせいか、裸足に温もりを感じる。