絶対零度の鍵
塗り替えられた過去





―そろそろ、陽が沈むな。



僕は開けておいた障子の間から見える景色に、ぼんやりとそう思った。


やがておもむろに腰を上げると、廊下に出、柱に寄りかかって空を見上げた。



すっきりと晴れた一日だった。


今見ても、雲はほとんどない。



穏やかな橙色が、濃くなっていく。





ふと、腹の虫が鳴いた。




「そういわれてみれば、お腹が空いたな。」



蓮貴は朝早くから出かけてしまって、話し相手が居なかった僕はつまらなくて死にそうだった。



空腹も気付かないほどに心を無にしていたらしい。




―玄に何か分けてもらおう。



そんなことを思い立って、僕は長い廊下を厨房の方へと向かい、歩き出す。



廊下に光があたっていたせいか、裸足に温もりを感じる。




< 619 / 690 >

この作品をシェア

pagetop