絶対零度の鍵
「あー、そうですよ!あたしはやりますよ、やってやりますよ!」




誰に言うでもなく、右京は大声で叫ぶ。



ちょっと面倒だけれども、それ以外に方法はないような気がしたからだ。



町から逸れた所にある小高い山で、謎の魔物が現れるのを待つことに決めた。



太陽が変わらない位置をずっと保ち、輝く様子を、右京は何ともいえない気持ちで見つめた。



極寒の地では見ることのない景色は、茜色に輝く。



燃え尽きる直前の灯火のようなのに消える事がない。



そして―



静寂が世界を支配すると。



地響きのような獣の遠吠えが、辺りに響き渡った。
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