絶対零度の鍵


「翠の所に行け!!!」




なんとか言い切るのと、男に投げ落とされたのはほぼ、同時だった。




翠、と言った時点で、蓮貴の瞳が揺れたのを僕の目はちゃんと捕らえていた。




ズシャァァァ





丁寧に描いてあった枯山水に叩き付けられて、砂が腕と足にすり込み、鋭い痛みが走る。



使用人達の悲鳴が上がった。




いってぇ…


僕は我慢できずに顔を顰める。




「何をふざけたことを言っている!!出て行け!二度とこんな真似するな!」




男は大分憤っているようで、忌々しげに言い捨てると稽古場の扉を閉めようとした。



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