絶対零度の鍵
だって。


僕が温度師から聴いた物語は、悲しすぎると思うんだ。




「翠は逃げないで、会いに来たんだ!!ちゃんと、伝えようとしてたんぞ!!!!」





いつの間にか、嗚咽交じりになっていることに気付く。



熱いものが目から零れ落ちる。




せめて、想いを伝え合えたら良かったんだろ?



お互いが、生きていたら良かったんだろ?



なぁ、兄貴。




「お前のその力は守るためにあるんだよ!!!!」




過ちを繰り返さないで。



「あの、白い花がっ!!!!」



僕はどうしようもなく出来の悪い弟だけど。




「咲かなくなるんだぞ!!!!!!」




普段余り感情を表に出さない兄貴が、本当は何を思っているか、位は読めてたんだ。
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