絶対零度の鍵
―良かった。
記憶が戻ったものの、僕の頭は靄がかかっているように、物事を明確に捉えることが出来ない。
ただ、安堵した。
きっと、これで、蓮貴は翠を助けられるだろう。
そう思ったら、身体中の力が抜けていくように感じた。
大粒の雨に打たれながら、僕はふらふらとその場にしゃがみ込む。
―あれ、おかしいな。
じわじわと染みている水の感触が、幾ら待っても感じられない。
急に視界が真っ暗になって、あぁ、きっとまた意識を失うんだなとわかった。
もう慣れ始めたその過程の中で。
僕は、あの文(ふみ)に書かれていた、短い文面を思い浮かべていた。