絶対零度の鍵
見ると左京も随分と蓮貴から離れてしまっていて、蜻蛉に至っては姉の骸の近くの崖まで戻っている。
そんな中で、左京の視線は上を向いている。
「?」
不思議に思った右京は倣うようにそちらに顔を向けた。
「あ!」
歪みではない場所から、一つの黒い影が落下してきている。
目を凝らしてみると、確かに卓毅のようだった。
しかも意識がなさそうだ。
右京はその場を飛び立つ。
「クミ!!!!」
咄嗟に指を鳴らし、卓毅の落ちるスピードを緩やかにさせようと試みるも、何故だか術が上手くいかない。
未だ静かなままの戦場で、右京の翼が風を切る音だけがやけに響いた。
左京も動いたのがわかったが、右京の方が僅かに速く、中空で少年を捕らえた。