絶対零度の鍵
「じゃ…行きますか」




軽く息を吐くと、右京は立ち上がった。



右手の人差し指と中指を閉じた瞼に真っ直ぐ当ててから目を開けると、視界がはっきりと開ける。動体視力が高まることで、飛ぶように動く敵を捕らえることができるのだ。




「いた。」




ピーピーと警笛を鳴らしている警備隊を、うるさいとばかりに白い獣が蹴散らしている。




グオォォォン




一際大きく吠えると、町の端に居た獣は、民家のある方角に標的を定めたようだ。



ほぼ動かなくなった男達を踏みつけると、突然、飛ぶように駆け出した。



真っ白な虎の様をした大きな獣。



対峙すべく、右京は飛び立った。
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