絶対零度の鍵
「俺がなんで、お前の兄になったか、わかるか?」
「…どういう意味…」
「何故、人間のいる所へ行ったのか、ということだ。」
僕にそれが分かる筈がない。
蓮貴が何を言わんとしているのか、全くわからなかった。
けれど蓮貴の声が、親しい友や兄を思い起こさせるので、胸が苦しくなる。
「温度師も、王族も、時間を制御することはできても、過去に身を置くことができない。だが、人間は違う。」
蓮貴はその漆黒の瞳で、僕をまっすぐに見つめているが、やはりその感情は読みにくい。
「俺は、それを利用する為に―」
「嘘だ!」
気がつけば僕は叫んでいた。
「嘘じゃない。」
なのに、蓮貴は切り捨てるようにはっきりと否定する。