絶対零度の鍵
「だって兄貴はっ…前の温度師が目覚めさせたんじゃないか!」



自分の意思じゃなかった筈だった。


あの温度師が来なければ、兄貴は今まで通りだった筈だ。



「押し殺していたが、自分が無かったわけじゃない。」



だが、蓮貴はそれも否定した。




「空間の世界は繋がっている。特に地球は―温度師の村と深い関係にある。現に公園の小山は村の裏山と結ばれている。」




「……それじゃ、右京があそこから来たのは―」




「歪みがあそこにあったわけじゃない。こちら側から向こうに行ったのは右京だけだし、向こうからこちら側に来たのはお前の友人だけだ。」




つまり。



「兄貴がそうなるようにしたってこと?」




僕の問いに、蓮貴は頷いた。




「温度師からの指名を受けていない温度師が、空間の世界を揺るがすのは時間の問題だった。」




全ては始まりから、蓮貴が関わっていたということか。
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