絶対零度の鍵
「…変わった。確かに変わった。」



蓮貴の口元はなおも笑んでいる。



「だが、俺が生きてしまった事実は変わらない。俺は鍵を使うことでしか、命を絶てない。」



僕の手から完全に力が抜けた。



「卓…いや、星と呼ぼうか。…俺、あの時言ったよな。俺は普通じゃないんだって。結局、翠が助かったとしても、傍にいることは叶わない。望まない者が力を持って縛られることのないように、俺は禁忌を犯そうとした。温度師失格の自分勝手な奴なんだ。」



そう言うと、蓮貴は一歩、後ずさりする。



そして、暗がりに何かを放った。




「…鍵」



青く光るものが十。


赤く光るものが十。


それは、聞いていたよりも、想像していたよりも、ずっと美しく。


儚く、感じられた。



「絶対零度の鍵と、熱界雷の鍵の材料が何か、知ってるか?」



蓮貴は鍵に手を翳しながら、僕に訊ねる。
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