絶対零度の鍵

白い顔が青く、赤く、光を受けている。




止めなくちゃならないと思うのに、足が動かなかった。





「絶対零度の鍵は、他者を想う人間の泪。熱界雷の鍵は、他者を想う人間の心、だ。それは地球では星を守るものとなり、温度師にとっては命を奪うものとなる。」





蓮貴が言うと同時に、鍵の光がさらに増した。




「世界は、繋がっているんだ。」




「蓮貴…っ」



僕は叫ぶようにして名前を呼ぶが、蓮貴は僕を見ることなく掌を上にする。




そして。




「星が、過去に俺の為に泣いてくれたことも、想ってくれたことも、この鍵になるんだ。最後まで、利用してごめんな。でも―」





静かに、引っ繰り返した。





「これが、俺の描いた最高のフィナーレなんだ。」




雨が、降る。



友を呼ぶ、僕の声を掻き消して。
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