絶対零度の鍵
残暑が厳しい季節だ。


蝉の鳴き声も変わってきたが、秋とは到底言い難い。



「卓毅!」



部活動で賑わうグランドを走り抜けて、門を出た所で僕を呼ぶ声がした。



「尭…」



振り返ると、幼馴染みの尭が居た。



「一緒に予備校まで行こうよ!」



あー、面倒なのに捕まった。



「何その嫌そうな顔!」



「いや、別にそんなことは…」



丸い目を三角にして怒る尭をなだめ、一緒に歩き出す。



「夏休みもあっという間だったねー」



のんびりと尭が言うので、僕も適当に相槌を打つ。



「でもさぁ、卓毅、なんか変わったよね?」

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