絶対零度の鍵




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夕刻を過ぎた公園は、誰も居なかった。



青々と生い茂る緑は、鮮やかだが、夕暮れに赤く染まっていた。




「はぁ、はぁ…」




僕は肩で息をしながら、入り口で呼吸が落ち着くのを待った。


汗があちこちから噴出している。


心臓の音が、自分でも聞こえるほどに、大きかった。


が、それに気付かないフリをして、僕は公園に足を踏み入れる。



来なくなって、一ヶ月位か。


まだそれしか経っていないというのに、何故か懐かしく感じる。



小山を上りきると、僕はてっぺんから、公園を見渡した。




右京と一緒に見た、景色。



君は覚えているかなぁ。



僕は覚えているのだけれど。



あの世界が現実のものだったら。


今頃温度師の役はどうなっているだろう。


世界の均衡は保たれているだろうか。


地球は落第星として切り離されてしまっただろうか。
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