絶対零度の鍵



蓮貴に隠れてこっそりと彫った文字。


夢なんかじゃなく、きちんとそこに文字はあった。





「ちゃんと、読んだのかよ?」



やるせない気持ちで僕は呟く。



ちゃんと。



過去は、塗り替えられているのか。



蓮貴の心は、救えたのか。



僕は、間違ってなかったのか。




そう考えると目頭が熱くなる。




例え本当に蓮貴が僕を利用した悪者だとしても。




―僕はやっぱり、君に出逢えて良かったって思うんだよ。






突然。




辺りが、急に真っ暗になった。




無かった風が、吹き始める。




「?」



不思議に思って、顔を上げて空を見た。



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