絶対零度の鍵

「あたし、ちょっとこの子どっかに連れて行くから、あんたは今のうちにお家へ帰りなさいよ」




相変わらず獣の耳を掴みながら、右京は片手で宙に円を描く。



すると、ちょうど幼女の入る程のシャボン玉が出来上がる。



その中にぽんと入れると、軽く息をふっと吐いた。



ふわふわと場違いな程穏やかに、少女を乗せたシャボン玉は飛んでいく。



それを見ることすらできない獣は右京を振り落とそうと躍起になる。




「落ち着いてって」




ちょうど眉間の辺りを、撫でてやった。




が。




グオォォォン



野獣は一度大きく吠えると、暴れ馬と化した。
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