絶対零度の鍵
「うーーーー、だるーい。ありえないしぃ。左京の奴、許さないんだから」




片方だけの翼をバサリバサリ動かして、空の鍵箱を持った右京は今森の上空を飛行中である。



王と共に住む城は、この森を辿り、山を越え、極北の場所にある。



そしてそこにあるのは、ひたすら氷、氷、氷だった。


クリスタルのように光る建物は雪の結晶に覆われ、その景色は年中変わらない。


そこでは、喩(たと)えこの世界の住人であっても、普通生きていく事ができない。


が、反対にそこに住む右京にとっては、民の多い町に近づくにつれて、暑苦しいというか重苦しいというか、とにもかくにも面倒な具合になる。



当然、その町の中にある鍵屋に行くのは、至極億劫なことなのである。
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