絶対零度の鍵

白い野獣の爪は3mを軽く越えていた。




「幻雪の結晶が入った瓶を割ったのも、あんたの仕業なの?」




問い詰める右京に、彼は両手を上げて制する。




「まぁまぁ、そんな怖い顔なさらないでください。」



鼻唄でも聞こえてきそうな程、上機嫌な声だった。



ジャラジャラと金具の音がした。



それがやけに癪に障る。




「とぼけるんじゃないわよ!温度師!」




静寂に包まれる砂漠の果てで、



片翼の少女の怒声が響き渡った。
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