絶対零度の鍵
「もう、あたし何回も行ってるのにー」
ぶつぶつとぼやきながらも、速度はかなりのもので、城を出てからものの数分で町が見えてくる。
もうおわかりだろうが、この右京。
只者ではない。
まあ、それはこの世界に只者が居れば、の話だが。
「とうちゃーーく!」
瞬間移動かと見紛うほどの動作で、シュタッと小気味良い音を立てて大地に降り立つと、目の前にあるのは『鍵屋』の看板。
「おーい、鍵師ー!入るよー!」
大きな水晶のような建物は、外にまで紫の煙をうっすら漂わせていて、中に入ると香が鼻に纏わりついた。
「くさい。やめてっていったのにー」
思わず鼻を摘まんで、薄暗い店内を見回していると、奥から声が掛かった。