絶対零度の鍵
放課後―。
「しっかし、珍しく何回呼んでも叩いても起きなかったよなぁ。」
帰ろうと腰を上げるわけでもなく、鞄に荷物を押し込むでもなく、ただ席に座ってだらしなく頬杖をついている僕と、同じようにしている溝端が言う。
「…思い出せないんだけど…なんか、夢を見てたんだよ。ヘンな夢。」
視線を彷徨わせてみるが、ちらとも思い出せない。
「夢、ねぇ。。あ、そーだ。お前、坂口に呼び出しくらってたろ。行かなきゃじゃん?」
溝端の言葉に、僕は体制をもどして軽く伸びをした。
「やだよ。ばっくれる。なんであんなんで説教されなきゃなんないんだよ」
何も入っていない空っぽの鞄を肩に掛けた。
「いいのかよー?」
「俺は自分の道を行くんだよ」