絶対零度の鍵

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蝉の鳴き声が五月蝿いこの時期。



外はまだ明るい。



運動部の掛け声が元気にグランドを駆け巡っている。



「いってぇー」




ずきずき痛む頭と、姿勢良く立ち続け過ぎて疲れ切った体を引き摺るようにして校門を出た。




「おわ、あぶね」




影を感じてふと顔を上げると電信柱がすぐそこにあった。



小さい頃道端でお金を拾ってから、下を向いて歩く癖が付いている僕は、ついつい前方不注意になってしまう。



慌てて軌道修正し、また俯いて歩く。



途中でipodを思い出して、耳にイヤホンを付けると最近お気に入りの曲が流れた。




そのお陰か、うだるような暑さが少しだけ和らいだ気がした。
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