SS小説(ファンタジー編)
ずっとずっと夢を見ていた、外の世界。






時には商人の護衛を、時には街の警備を、時には賞金稼ぎを。





剣の腕を上げ、人脈を作り、気付けば俺の名前はいたるところで噂になっていた。





剣でなら誰にも負けない。





そう自信がついてから初めて、俺は故郷の事を思い出した。





故郷を出てから無我夢中で旅を続け、気付けば10年も時は経っていた。





あの少女はどんなに綺麗な女になっているだろうか。





お袋や親父、町の人は元気で暮らしているだろうか……もっとも両親に限って言えば、俺が旅に出ると言った時に拳固で何発も顔を殴ってくるような気性の荒い人間だから、そう簡単にくたばっている事は無いだろう。そう思うと少し笑えた。





そうやってしばらく色々考えを馳せていると、故郷へ帰りたい気持ちが日に日に強くなっていった。





ああ、皆に会って旅の話をしたい。





湖に住む妖精に、雪山に暮らす熊、煌びやかな舞踏会、優しい村人。





そうして俺は故郷に戻る決意を固めたのだった。
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