SS小説(ファンタジー編)
陽が沈む。





あと少しで、この沈む町は見えなくなるだろうか。





夜の闇に紛れ、きっと明日の朝日が見えるまでその美しさを隠す。





下をぼんやり覗き込んでいると、背後に気配を感じて振り向く。





そこに立っていたのは、親父よりちょっと年上くらいの初老の男性だった。





「坊主、そんなとこに居ったら危ないだろう」





三十路近い男に『坊主』もないだろうと思ったが、俺は何も言わずゆっくりと立ち上がる。





男性は遠巻きに崖下を眺めると、ほうっとひとつため息をついた。





「いつ見ても綺麗だ……。坊主、“これ”を見たのは初めてかね?」





「ええ」





「そうか。世界中探してもここまで綺麗な景色は2つと無いだろう」





俺は返事をする代わりに小さく頷く。





男性は厳しい顔つきで目を細めて続けた。
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