SS小説(ファンタジー編)
「7年前だ。ある日突然、一晩とかからず“これ”は沈んだ。海も無いこんな山間、かりに大雨が降っても町が沈むなんて考えられない。なのに」
視線を外し、男性は急に黙り込む。
先に続く言葉は容易に想像がつく。
「町の人々は?」
「……言っただろう。一晩とかからず沈んだと。逃げる隙も無かっただろうな」
その言葉を聞くと、さらに俺はこの沈む町の神秘さと美しさに胸を打たれた。
「しばらくすれば昔の話だ。麓の町の幼子たちは、“これ”の生きている姿を見た事は無いだろう」
「そうですか」
表現のできない感情が胸の中で暴れる。ドクンドクンと、耳元で心臓が波打つ音がする。眼下で波紋を揺らす水面に、まるで自分が呼応するかのようだ。俺は沈む町から目を離せなかった。
男性は帰りがけに、崖に気をつけるようにと言って去っていった。
視線を外し、男性は急に黙り込む。
先に続く言葉は容易に想像がつく。
「町の人々は?」
「……言っただろう。一晩とかからず沈んだと。逃げる隙も無かっただろうな」
その言葉を聞くと、さらに俺はこの沈む町の神秘さと美しさに胸を打たれた。
「しばらくすれば昔の話だ。麓の町の幼子たちは、“これ”の生きている姿を見た事は無いだろう」
「そうですか」
表現のできない感情が胸の中で暴れる。ドクンドクンと、耳元で心臓が波打つ音がする。眼下で波紋を揺らす水面に、まるで自分が呼応するかのようだ。俺は沈む町から目を離せなかった。
男性は帰りがけに、崖に気をつけるようにと言って去っていった。