近しい華は高嶺に咲く美しき花
マスター特製のビーフシチューを頂いた後はいつも以上に飲みが進んだ。
特製カクテルを飲んだ後、さらに白ワインのボトルを2人で2本空けた。

俺は自分ではそんなに酒は強いとは思っていない。
一方の先輩はかなり強いけど、今日は少し酔っているのか、いつも以上に饒舌になっている。

『今日、花村をここに連れて来たのはなぜだと思う？』
「さぁ、何でしょう」

俺には想像つかなかった。
こんな隠れ家、今まではきっと彼氏と喧嘩した時に、マスターに愚痴ってたんだろうな。

『私、彼氏と別れちゃった』
「別れた？あんなに好きだった人と？」

俺は先輩の彼氏の人となりは分からないけど、その男性の存在が先輩の仕事の好不調の波を決めているくらいだから、相当好きだったんだろうと邪推していた。

『知らなかったの。彼、結婚して子供もいて・・・しかも奥さんに2人目が出来たって』
「え？不倫？」
『だから、知らなかったの！彼、結婚指輪もしていなかったし、家族の話をする時も自分の兄と両親のことだけだったから』

そう言って先輩はカウンターの上で突っ伏した。
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