それは…好きだから。(樹生side)
 仕事中にすることじゃないけど、
 三週間ぶりに会ったんだから、
 もう少し甘い余韻に浸らせてくれてもいいのに……

 
 このままじゃ、仕事が手につかない。
 俺は壁に両手をついて、彩佳を閉じ込める。
 

「おまえだって触っていたよな?」

「触って? 誰を?」

 キョトンとした顔で俺に尋ねる。

「和田課長」

「和田課長? いつ?」

 気づいていないのかよ。無自覚……

「さっき。笑いながらあいつの腕を触ってた」

「そうだっけ? ていうか和田課長は上司なんだから、
 あいつなんて呼び方したらダメでしょう」

 論点そこじゃないだろうと突っ込みたくなったけど、
 彼女にとっては、思い出せもしないたわいのないことだったようで、
 そこには安心したけど。

 和田課長って確か独身だったよなって、余計な情報が頭をよぎった。

 
「俺の上司じゃないし」

「何、そのへ理屈」

 彩佳がムッとしたように口を尖らせる。

「それは認めるけど、和田課長だけじゃなくて、
 もしかして他の男にも、みだりに触ったりしてないよな?」

 見苦しいくらいの嫉妬。
 気になりだしたら止まらなくなった。
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