それは…好きだから。(樹生side)
「他の男って……それ、飛躍しすぎ、そんなことするわけないじゃない」

「ホントだな?」

 俺は密着するように一歩詰め寄って、彩佳を見下ろした。
 頭一つ分下の彩佳が半ば呆れた顔で見上げてくる。

 苦笑いしたくなるほど了見の狭さに自分でも呆れる。

「ホントよ。わたしには樹生がいるんだし……」

 そこまで言って黙り込む。
 視線を下におろして何やら考え込んでいた彩佳が、もう一度俺を見上げた。

 仄かに頬を赤くして。

「わたしの勘違いだったら、ものすごく恥ずかしいんだけど」

 窺うようなそっと上目づかいなのが妙に色っぽくてかわいい。

「うん。言って」

「笑わないでね。あのね、もしかして嫉妬してくれているのかなって、思って。あっ、ごめん。やっぱり……違うよね。今の忘れて」

 彩佳は勝手に自己完結してあたふたと、
 書類で顔を隠してしまった。
 
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