それは…好きだから。(樹生side)
 相変わらず自己評価が低い。

 俺がどれだけこいつのことを好きなのか、
 全然わかっていない。

 それに自分のことも。

 いつも薄化粧だからか、バッチリメイクしている女に比べたら、
 派手さがなくて目立たない。

 その上に、髪型もいつも纏めてひっつめている感があるから、
 余計地味に見えてしまう。

 かわいい顔立ちをしているのに、
 それが自信のなさにつながっているんだろう。

 綺麗に装うのは俺の前だけって決めているから、
 職場ではこのままで充分だし、俺にとっては好都合。

 他の男に彩佳の良さがばれたりしたらイヤだからな。


 これ邪魔。

 俺は書類をはぎ取ると床へ落とした。
 再度、書類が散らばる。

 あっ、彩佳の声がして、
 しゃがみ込もうとした彼女の動きを阻止して
 抱きしめた。

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