海に写る月
一人で降りようと思った。
しかし、ここでこの女子生徒を放置したらまた変な絡みに巻き込まれる。
そう考えて、手を伸ばした。
素早く手首を掴むと勢いよく引っ張り出して、そそくさと人混みに突っ込んでいった。
人混みをぬって歩く俺とは対照的に、後ろの女子は至る人に「すいません。」「すいません。」と何度謝っていたか。
そろそろ離した方が良いと思い、人がどっと来たときを見計らい手首を解放した。
俺の後ろを彼女が追って来ることはなかった。