L'a maro e dolce amaro ~甘くて苦い恋の味 ~
「そう言えば、進路の方はどう?」

懐かしい気持ちから一気に現実に引き戻された。

マイペースなんだから笑。

…こうして心の中では笑えるのに、なぜ表情に出ないのだろうか。

「年明けたらすぐ入試です。模試の結果では第一志望行けると思います。」

「良かった!確かあゆむさんって国際学部行きたいんだよね?」

「…なんで知ってるんですか?」

先生が担任を持ってくれたのは1年の時だけ。

2年からは上村先生という国語科の先生に担任をして貰っていて、先生とは進路相談して無い。

「河野先生から聞いたのよ笑。」

「…生徒の情報流すなよ河野先生。」

河野先生は進路指導の先生、的確なアトバイスをくれるが、なんか…チャラい。

「まぁまぁ笑。それより国際学部なら英語必要でしょ?分からないところ有ったら、いつでも聞きに来てね。」

…前言撤回。

河野先生、ありがとう。

まさかの展開過ぎて…声にもならない喜び。

「あ、ありがとうございます。」

「いえいえ笑。 」

ーガラガラガラー

「はい到着!荷物ありがとう笑。机の上置いといて。」

ここの職員室は生徒が使えるラーニングスペースと、先生のプライベートスペースと区切られている。

基本プライベートスペースに生徒が入る事は出来ないけど、先生の荷物を置くときは例外で入れる。

「分かりました。」

職員室までの距離は長くて短いように感じた。

言われた通り先生の机の上にワークを積む。

綺麗に整頓された机は先生の性格を表しているのだろう。

真面目で優しくて、信念をまげない強さを持った天然な先生。

そんな思いを取ることができる。

私はそんな人を好きになったんだ。

…好きって言えないもどかしさ。

ーガラガラガラー

「失礼しました。」

「あ、あゆむさん待って!」

用事を済ましたから出ていくのは普通。

呼び止める事などあまりない。

「なんですか?」

「これ、手伝ってくれたお礼!」

先生の手には透き通ったオレンジ色の飴が乗っていた。
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