L'a maro e dolce amaro ~甘くて苦い恋の味 ~
「でもさ、先生結婚してるでしょ?」

出た天邪鬼な私。

素直に喜んだらいいものを…。

「え?して無いよ」

「…うそっ?!して無いの!?」

今度は私が大声を出してしまった。

「声でかい!!」

「だって…だって。」

今迄の3年間私はずっと奥さんだからと思い天邪鬼に振舞っていたのに…。

人妻を好きになるなんて最悪だと思っていた。

でも好きだから、片思いだから、知られたくないの一心だったのに。

「はっ?!してると思ってたの?!」

「ずっと…。」

「逆になんでそう思ったのか教えて。」

「だってさ考えてみてよ?あんな品行方正、才色兼備な人が結婚して無いって事、普通は無いでしょ!」

「まぁそうだけど、文先生は寧ろ完璧過ぎていないぞ。」

「そうなのかなぁ…。」

「それに本人言ってたし。」

「はっ?!マジで?!」

まさか先生自身が言うなんて…。想像付かない。

「うん。中学の時にね。」

…そうだ。祥香は中学からこの学校なんだ。

「どんな感じで言ってたの?」

「普通に。授業中例文読んでいた時に、『余談なんだけどさ』と言って結婚の話になって『私独り身だから』と言うニュアンスで言ってた。」

「なるほど…。」

そうか…だったらそれくらい知ってるよね。

私みたいな編入して来た奴よりも倍ここの学校にいるんだし。他にも私には知らない事沢山知っているんだろうなぁ。

「ねぇ、文先生って昔からあんな先生なの?」

「どうした急に笑。」

「ただ何となく気になった。」

「昔からって言う程一緒にいる訳じゃ無いからそこまで詳しく言えないけど、変わってないよ。やっぱり生徒には好かれてるし、教え方は上手い。」

先生はみんなに優しいんだ。

所詮私に見せるあの笑顔も教師として見せてるに過ぎない。

勘違いだって自分も分かってる。

分かっているつもりなのに…。なんでこんなにも胸が痛むのだろう。
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