ソフレ
 透は微かに震えていた。

 そう……透にも、傷がある。

 彼は、まだ小さい頃、自分の意志とは無関係に、義母にセックスを強要されて、心が壊れた。

 それから先もキレイな外見が災いして、女性からだけじゃなく、男性からも迫られて。

 すっかり人間不信の気の立った獣(けだもの)みたいになっていた。

 最初に出会ったときは無茶苦茶で、すぐ噛みついて来たけれど。

 一緒に添い寝を始めて、落ち着いて来たのかな?

 今では、笑う時間も増えてきた。

 彼が、わたしの服を絶対に脱がさないように、わたしも、彼に『恋人になって』とは絶対に言わない。

 ダブルベットで二人、抱きしめ合って眠っていても。『エッチして』とは言わないし、キス一つさえも望まない。

 そんな繋がりを『ソフレ』……添い寝フレンドっていうらしい。

 こんな関係が、お互いの安心感を誘うのかもしれないね。

 ………

 透は、わたしの腕の中で微かに震えてる。

 今日も、わたしの知らない所で、辛いことがあったのかな?

 彼が望むそのままに。ぎゅっと抱きしめているうちに、彼の震えがだんだん収まって来た。
< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop