ソフレ
「なんで、逃げようとするんだよ?
 何度もベッドを共にした仲だってのに、今更『恥ずかしい』はねえよな、あ?」

「や……」

 やめて! なんて言葉は、声にならなかった。

 恐怖で動けない。震えるわたしに、彼は首筋に次々と、口づけを落としてゆく。

「最近、冷てぇじゃん?
 お前が誰のモノかって、もう一度、教えてやるよ?
 この時間じゃ、学校に残っているヤツもそういないし、丁度ベッドもある。
 鍵さえかければ、問題ねぇ。
 今日は変わった趣向で楽しもうぜ」

 彼は犬のようにべろっとわたしの頬をなめると、手首を引っ張った。

「来い!」

「やだ……!」

 このままだとわたし。ベッドに引きづり込まれて抱かれてしまう!

 毎日通う職場なのに! 淫らな行為とは、全く無縁の場所のはずなのに!

わたしは怖いのを我慢して、全力で叫んだ。

「やめて、西尾先生……お兄ちゃん!」

 けれども、わたしを子どもの頃から弄んで来た西尾の義理の兄は鼻で笑う。

「止めねぇよ、莫~迦。
 お前のコトはキライだけど、抱けば気持ちがイイからな。
 いつものように、喘ぎ声出すだけの玩具になってればいいんだ!」

 そう義兄がげらげらと笑った時だった。
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