夏恵
【1章】 夏恵

夏恵



  暑い夜は嫌いだ


 寝付けず、思い出す事も多い。


 夏の思い出が頭を過ぎり秒針の音にふと我に返る。外が青白く明けてくる頃、思い出したかの様に眠気が襲う。

後数時間もすれば、僕はネクタイを締めて会社に向かう。

強すぎる夏の朝日を浴びながら、目を赤く腫らして下の瞼を窪ませた僕が、アクビをしながら車に乗り込む。

眠れない日々を過ごす夏の夜はこれの繰り返し。

いっその事、寝ずにファミリーレストランにでも行ってアイスコーヒーのドリンクバーで朝まで本でも読んで粘っている方が幾等か有意義なのかもしれない。

有意義じゃないにしても、そうしてる方が蒸し返る部屋のベットで一人、夏恵の事を思い出さなくてもいいかもしれない。
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