夏恵
僕より少し遅れて夏恵が車から出てきた。
夏恵が抱えていた白いトートバックには夏恵の体を美しく包み込む真っ白なビキニが入っていた。
僕は月並みにその立ち姿の美しさに魅入ってしまった。
その姿の前に僕は何も言えなくなる。
夏恵はおろしたてのビーチサンダルを気にしながら少し不器用にこちらに歩いてくる。
夏恵はそのまま海の方向では無く僕に向かってきた。そして僕の腰に巻きつき『行くよ。』と静かに呟いた。
僕は無言のまま頷き、夏恵の手を引きながら防波堤に50m間隔位で設けられている階段を上る。
階段を三段目まで上ると遂に僕の前に海が広がった。
僕はそのまま防波堤の一番高い所まで上り海を見下ろす。
月曜日に来たばかりなのに僕は永い間海を見ていなかった様に懐かしく感じていた。
まるで波打つ水面に僕は溶け込まなくてはならないかの様に感じた。
夏恵はそんな僕の顔を覗き込み、先に砂浜側への階段を下りながら僕の手を引いた。
僕は海から視線を外す事無く手を引かれるまま砂浜に下りた。