夏恵

僕が棚の下の方に陳列された砂場セットを取り上げ顔を上げた時に、天井から吊り下げられた、浮き輪が視界に飛び込んできた。

何の事無いビニール製の黄色やピンクの花柄がプリントされた子供用の赤い浮き輪だった。


『・・・これがいいじゃないかな・・・』


僕は自然と、その言葉が口を吐いた。

明子は僕の言葉に反応し僕の視線を辿り顔を上げた。

そして明子は浮き輪を見つめ『うん・・・トモユキの言う通り、コレがいいね。』と優しさが滲み出た様な笑顔で言った。

僕達がレジでその浮き輪を買い求めようとしたら、売り場に吊るしてあった浮き輪が最後だった。

店員はわざわざ脚立を使い吊るしてあった浮き輪を取って空気を抜き、綺麗な包装紙に包んでくれた。

店員が『お子様にですか?』と聞くと明子は嬉しそうに否定していた。
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