夏恵
お盆を過ぎてもなお、夏の終わりを惜しむ様に、太陽は燦々と地表を照らし猛威を振るっていた。
僕は否応無く日常を過ごしている。
夏恵の答えも聞けぬまま、明子に答えを出す事も無く。
その日僕は、土曜日なのに珍しく仕事が入り、仕事を終えて車で帰路に着いていた。
通常よりも流れの悪い国道をぼんやりと眺めながら僕は明子の事を思い出した。
けして忘れた事を思い出す感覚では無く。
自然と頭の中に、ある映像が流れた。
それは明子と初めて二人で出掛けた日の映像だった。
今日は全国的に有名な花火大会の日で、県の内外を問わず沢山の人々が僕の住んでいる街に集まる。
僕の部屋に近付くと国道の流れは、淀んだ川の様に全く動かなくなり、僕の気持ちを益々憂鬱にさせた。