夏恵
大輪の花が夜空に舞う。
花火大会の開始を告げる大きな花火が夜空を覆って、ゆっくりと一本一本の光の弧を描きながら闇に吸い込まれて行く。
僕は車の窓の外に見える光景に心奪われる。
歩道を歩く人々も皆立ち止まり、夜空を眺める。
夜空を覆い尽くしてしまいそうな大輪の花を皮切りに、連続して数十発の様々な色の花火が夜空を飾った。
夜空を照らす様々な色は、その色で地表を照らす。
僕や歩道で立ち止まる人々、更には渋滞の車やそれら全ての物をカラフルに彩る。
明子の顔が様々な色に彩られる光景を僕は不意に思い出す。
最初に花火大会に来て以来、僕達は毎年ここへ訪れた。
彼女は今年も二人でここに来るつもりだった筈だ。
少なくとも僕はそうだった。