夏恵

僕が夏恵に感じていたモノの正体はタナトスなのかもしれない。

夏恵は何かを破壊する様に、自らの何かを破壊したい欲求に駆られる様に僕に抱かれたのではないか。

そして、そんな夏恵に強く惹かれた僕もまたタナトスに支配されていたのではないか。

そんな都合の良い事を考えながら自分を無理に納得させようとした。


『須藤さん。ちょっといいですかぁ?!』


工事の人間がビショビショになりながら店内に入り須藤を呼んだ。

僕と須藤は工事の男について行く様に外に出た。

外に出ると風雨は建物の中に入る前以上に激しく感じた。

朝から降り続いている雨は午後も止む事は無く、降り続いた雨は幾重にも重なった水の層を作り、排水溝に収まりきらない水が溢れている。

風は建物を揺らす様に強く吹き、建物を覆うビニールシートはバサバサと音を立て、それ以外の音を掻き消してしまいそうな程だった。
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