夏恵
僕は今まで生死を分ける様な状況に対面した事が無い。
おそらくそんな状況は僕を酷く慌てさせるだろう。
須藤の奥さんの気丈さは、全てこの男を根拠にしている物なのだろう。
それはこの須藤と言う男の生き方以外に他ならない。
果たして僕にソレを示せる生き方が出来ていただろか。
『あかん・・・これしか無かってん』
そう言って須藤の奥さんは病室に入るなり売店の袋からプリンを取り出してテーブルの上に置いた。
『森永のやないやんけ!!』
『贅沢言うなボケェ!!』
奥さんは笑顔で言った。
月曜日になって須藤の病室に同じ会社の代わりの人間が来て須藤は簡単な引継ぎをした。
その後、頭の簡単な検査をして異常も無く、木曜日には自宅近くの病院に移って行った。
僕はと言うと引継ぎの人間と簡単な打ち合わせを行った。