夏恵
・・・・・ジリ・・

・・・ジリジリ・・・

ジリジリジリ・・・・

テレビで見かけるオーケストラの指揮者が棒で合図を送るように最初の一匹が仲間に伺いを立てる。

僕は予想に反する事なく外が青白く明けてくる頃まで眠る事はなかった。

ジージリジリジリ・・・ジリジリジリジリ・・ジージージリジリ・・・

蝉が朝一番の演奏を始める・・・眠れない日々を送って分かった事と言えば、朝日を感じて一番最初に目を覚ますのは鳥では無く、蝉だったと言う事だけ。

間も無く鳥も囀り出して、その後二時間もすると僕の目覚まし時計が朝を伝えるだろう。

僕は気力を込めて『眠り』に集中する。

僅かな睡眠であれ、今の僕に必要なのは睡眠だ。今日も浅い眠りに就く。

やがて朝日と呼ぶには相応しくない夏の朝日が僕の頬を撫でる。
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