夏恵
白いブラウスがベットの隅に脱ぎ捨てられている。
その姿は広げてみないとブラウスとは判らないが、僕が夏恵から剥がした白いブラウスだ。
夏恵は僕の胸の上で疲れ尽きた様に崩れ落ち呼吸を整えている。
僕の胸に夏恵の息遣いが伝わる。
僕の胸の鼓動もきっと夏恵に伝わっている事だろう。
『・・・動いてる』
夏恵が呼吸を整え静かに囁きながら顔を上げる。
『重くない?』
『・・・・重くないよ・・・全然気にならないよ』
『・・・じゃぁ・・・もうちょっとこのまま』
そう言いながら夏恵は僕の胸にまた顔を伏せる。
僕は今日エレベーターで出会った白いブラウスが良く似合う、とても良い香りのする、夏恵と見知らぬ街でお互いの体を求めあった。
そんなよく素性も判らない彼女を僕は心の奥から求めた。
不思議なものだ。彼女の何も知らないのに僕は彼女を愛している。
心の奥から込み上げてくる想いを僕は誤魔化さずに受け止められる。
知っているのは彼女の名前だけだと言うのに、未だになぜ、あの雑居ビルの五階に向かったのかも聞けずにいるのに。