夏恵
今の僕には僕の胸の上で息遣いを整えている彼女と僕らを包み込むこの空間さえあればいい。
『・・不思議なの・・・』
夏恵は顔を上げずに囁いた。
夏恵の息遣いは、もうすっかり整いつつあった。
『・・・トモが好き・・・ううん違う・・・愛してる。』
僕は歓喜の声を上げる以上に僕の前に突きつけられた夏恵の言葉に深く驚いた。
勿論、彼女が誰とでもすぐに寝る女だと思ってた訳じゃないし、酒だけの力で二人ここに来た訳でも無いとは思っていた。
つまり僕らを今この空間に導いたのは何か不思議な力であったのは確かだったが、それが今僕の感じていたモノだった事に僕は深く驚いている。
・・・僕達は愛し合っている。
白いブラウスはベットの端から力尽きた様にずり落ちた。
暗い部屋で僕達は繋がったまま、お互いの温度を感じ、息遣いを聞きあっている。
静かな部屋に雨の音と二人の静かな息遣いが響き渡る。
『・・・俺もナツエを愛してる。』
僕の声は静寂の中に飲み込まれる。