夏恵
目覚まし時計が現実へ僕を引き戻す。
僕は目覚ましを止めながら自分の部屋を見回す。
そこには二日間すっぽりと僕が抜けていた光景が広がる。
不意に夏恵の息遣いを思い出し、夢なのか現実なのか判らなくなる。
ここに夏恵を見つける事の出来ない不安からか酷く慌てて携帯電話を探す。
携帯電話は枕元のいつもの棚の所にあった。
携帯を開き着信履歴を見つめる。
そこには夏恵の名前は無かった。
僕は不安でどうしようも無くなってしまいそうだったが、発信履歴に確かに夏恵の名前があった。
それは僕が別れ際のホームで長いキスをする前に夏恵の携帯番号に掛けたツーコールを登録したものだった。
僕はその番号に掛けてみたい欲求にかられたが、後ろ髪を引かれる思いで月曜の現実に戻る事にした。